Insights
Insights
課題と機会
日本国内には、豊かな文化や美しい景観を持つ地域が数多く存在します。その中でも、せとうちは、直島のアート、歴史ある港町、広島の文化的背景など、世界的にも高く評価される固有の体験を豊富に有しています。しかし、それぞれの魅力が点在しており、地域全体をひとつの有機的な物語としてつなぐ共通の視座が不足していました。
サフランは、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)とともに、せとうちを東京や京都に次いで必ず訪れるべき洗練された目的地へと昇華させ、エリア内の周遊そのものを旅の醍醐味として促すプレイスブランディングの機会を見出しました。
支援内容
- ブランドアイデンティティ | ブランド戦略の定義、体験・表現原則の構築
- カスタマーエクスペリエンス | 顧客体験の設計
- デリバリーシステム | ブランドの実装サポート

大都市の混雑から離れ、ゆったりと流れる時間の中で味わうせとうちは、表面的な観光ではなく、その土地ならではの本物の体験や発見を求めるモダンラグジュアリー層にとって、必然の選択肢となる可能性を秘めていました。
プレイスブランディングの役割は、地域全体の体験を一貫したストーリーでつなぎ、独自の個性を際立たせ、届けたい相手にとって意味ある体験価値を提供することです。サフランは本プロジェクトにおいて、せとうちの風土と真摯に向き合い、その本質を体現するブランド戦略に着手しました。

取り組むべき最初の課題は、せとうちならではの魅力を独自の体験価値として定義づけし、言語化することでした。そのために、私たちは実際の旅行者と同じ目線で地域に深く没入するフィールドワークを実施しました。
8日間。4県。13都市。5つの移動手段。80km以上の旅路。ガイドツアーへの参加、寺院や美術館の巡回、街並みや海辺の散策―。主要な文化拠点から、観光地図には載らない小さな港町まで、あらゆる角度からこの地域を見つめ直しました。
この徹底的なリサーチを経て、私たちはJR西日本が持つ、交通インフラという枠組みを超えた、より大きな役割と可能性を確信しました。
それは、列車での移動そのものを、豊かな旅体験の一部に変えるということです。車窓に広がる風景を眺め、地域の日常のリズムを感じ、ただその瞬間に身を委ねる時間。土地や海の景観、人との出会い、地域の味わい。それらすべてが、せとうちらしさを形づくる忘れがたい記憶へとつながる入口となるのです。
地域に深く入り込んだことで、ある確固たる真実が見えてきました。それは、人々の営みや文化のすべてが瀬戸内海のリズムと調和して存在しているということです。
アート、自然、そして日々の暮らしが互いに溶け合っているこの地域では、特別な価値を声高に主張する必要はありません。「特別」は、日常のありふれた景色の中に静かに息づいています。
この洞察が、ブランド戦略の核となりました。日々の発見が心地よい儀式となり、日常そのものが驚きの舞台となる。サフランは、せとうちの毎日に実在する美しさを引き出すべく、「今ここにいること」「つながり」「発見」といったキーワードを軸にブランドを構築していきました。
ここから生まれたのが、「Connected Memories」というブランドコンセプトです。土地と海のつながりに着想を得たこの考え方は、せとうちの温かいホスピタリティを体現しています。この思想はブランドデザインにも一貫して反映され、「どこへ行くか」だけでなく、「どのように旅をするか」を大切にする、穏やかで上質な旅へのアプローチへとつながりました。

構築したブランド戦略を絵に描いた餅に終わらせないため、私たちは具体的な顧客体験の設計に着手しました。戦略を旅のあらゆる接点(タッチポイント)に適用するための包括的な設計図(ブループリント)へと落とし込み、ブランドが旅の各場面でどのように息づくかを具体化していきました。
旅行者がデジタル上でせとうちと出会う最初の瞬間から、実際に地域を巡り、土地の文化に触れ、思い出を持ち帰るまで、すべての接点が「Connected Memories」の精神を体現するように設計されています。
これにより、JR西日本は単なる移動手段の提供者にとどまらず、ブランドを通じて旅の体験そのものをトータルでプロデュースし、豊かな時間を案内する存在としての役割を確固たるものにしました。



こうして生まれたせとうちブランドを世にお披露目する最初のタッチポイントとして、大阪駅の大型ビジョンでの動画掲出を行いました。
一般的な観光広告のように名所を並べるものとは異なり、この映像は旅行者に「自分のペースで進もう」と優しく語りかけます。海が物語を紡ぎ、決まった目的地を急ぐのではなく、寄り道や余白、一瞬の情景が地域のリズムを映し出します。
これは、せとうちのコミュニケーションにおける大きな転換点となりました。ブランドを通じて、せとうちは旅行者に情報を「説明する」ものから、その魅力を「情緒的に感じてもらう」ものへと進化したのです。

せとうちの持続的な進化
こうして、個性あふれる地域と体験をひとつの美しい物語で結びつける、一貫したブランドアイデンティティがここに誕生しました。それは壮大さを誇示するのではなく、日本の繊細さによって定義される、新しいラグジュアリーの目的地です。
せとうちブランドの真なる発信は、ここからさらに拡大していきます。駅構内の大規模なディスプレイから、車内のさりげないメッセージに至るまで、JR西日本はせとうちの個性と、そこを行き交う人々の感情を映し出す旅を形づくっています。あらゆるタッチポイントが丁寧に考え抜かれ、その土地らしい心地よい速度感を大切にしています。
JR西日本は、せとうちエリアを物理的につなぐ鉄道事業を強固な基盤にしながら、サフランと共に創り上げたブランディングを通して、これからも地域を戦略的、そして情緒的につなぎ、その価値を高め続けていきます。



サフランは、企業の資産や地域の個性を深く掘り下げ、世界へ届けるパートナーです。プロジェクトの全容や、ブランディングによる課題解決についてのご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。